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2001年1月16日 発売

表紙イメージ

天音 amane

山口ヒロミ
定価:1600(税込:1760)円
ISBN:4-916110-61-7 2001年1月発行
A5変型判上製 78ページ 画文集

「ありのままで なんて美しい」

解説からだを動かすことも、話すこともかなわないまま、極限ともいえる生と死の境で生きる娘と、母、父とで紡がれる暮しがあることを社会に向け伝えたいと、個人誌『あまね通信』に託したいのちのいとなみを母親ヒロミが『寝たきり少女の喘鳴(こえ)が聞こえる』と題する本にまとめてから5年。娘、天音さんは2000年10月、19歳と4ヵ月での生涯を静かに終えました。
折節、通信を埋めた母の手になる娘の絵は、24時間介護で社会から閉ざされがちな日々からの解放を願う切ない気持ちから生み出されたものではありました。けれど、いつしか硬直し曲がりくねった手や足や、変形した肢体の内側から溢れ出すいのちの輝きに魅せられ、気がつけば「障害によってつくられた天音の姿態こそが」絵のモチーフに。娘に寄り添いつづけた19年の日々を綴ったエッセーは、いのちのみなもとから聞こえてくるささやきのよう。
「私のお腹の上に天音を乗せ、ちょうどラッコの親子が波間をただようように、私たちは夜のしじまを眠りにむかいます。これは、毎晩の儀式のようになってしまいました。そうしなければ、いつまでたっても天音は眠れないのです。出産時の脳へのダメージがあまりにひどくて、大きなケイレンがいつもいつも天音を襲いました、昼間はもちろん、夜も。眠りに入りかけたらケイレンが起き、眠りの邪魔をするのです。だれかがいじわるをしているかのように。天音は苦しくて泣き叫び眠りから見放されてしまいます。眠れないほどつらいものはありません。なんとしても眠らせなければと一晩中抱きつづけて、ある日やっとこのラッコの親子スタイルを見つけたのです。…」(以下略 ──本文より)

著者の山口ヒロミさんってどんな人?
1945年、佐賀県生まれ。
大阪の大学を卒業後、大阪市内の公立小学校に勤務。
在職中は、障害児学級を受け持ち、さまざまな障害をもつ子供たちに接していました。
36歳の時出産した娘、天音さんが、出産時の医療ミスで重い脳性マヒに。「天職」とまで思った仕事を介護のために退職。
1988年より、夫とともに創刊した個人誌「あまね通信」のなかで天音さんを絵に描き続け、初めての著書『寝たきり少女の喘鳴(こえ)が聞こえる』(’95年)出版の折には、地元大阪のセルフソウ・アートギャラリーでパステル画、ペン画、を集めた個展を開催。その後は銅版画へと創作の手法を移し、天音さんをモチーフにした作品を生み出しつづけています。
天音さんが亡くなって3年後の2003年10月に、自宅近くのマンションに開設した「天音堂ギャラリー」でヒロミさんの作品を常設展示。天音さんの匂い漂う空間では他の作家の個展も随時開催されてきましたが、この10月には、久しぶりにヒロミさんの新作展「夢中で、あきるまで」が催されました。
生身の肉体を離れ、自由に天空を飛翔する天音さんがいっそう深まる憶いの底から立ちのぼってくる様がイメージ豊かに描かれ、ヒロミさんの新たな旅立ちを予感させる作品となっています。

2003年10月より天音堂ギャラリーにて作品を常設展示していましたが、2011年12月にギャラリー運営は終了しました。

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