岩手県北、東北本線の小さな駅・小鳥谷(こづや)に初めて降り立ったのは1981年秋、ぶどう実るころでした。
その年の6月に隔月雑誌『自然食通信』を創刊し、農薬も化学肥料も使わなかった自然と共にある穀物や野菜を食卓に乗せ、食べていたのが当たり前のことだった僅か30年前の農法と暮らしにまだ戻れるはずと、日本全国でもそうした機運が高まってきて、素人に毛が生えたかどうかみたいな雑誌創刊となったのでしたが、全国紙の家庭欄に小さいスペースながら記事紹介されてことで、突然、全国から問い合わせが殺到し、創刊予定の日も大幅に遅れながらでしたが。
岩手県でもそうした農法と暮らしを取り戻していく実践の道を考えようと「有機農業」研究会発足とのお知らせをいただき、上野から特急で6時間、盛岡市の会場にたどり着いたのでしたが、迎えて下さった地元の方から、「一条ふみさんが来られるご予定だったのですが、用ができて行けなくなった」とのお知らせがありましたので、と聞き、緊張が解けてホッとした気持ちと、ご著書のタイトル『東北の女ごたち』がたまたま書店で目に入り、私の母の若かった頃の人生に結びつくのではという気がして思わず手に取り、購入してどこか人の匂いに包まれた文に懐かしさも感じたりしながら読み終えて、2年ほど経って、想像もしなかった方にお目にかかれるのだと、どきどきしながらの出張を決めたのでした。
主催側の方から「電話番号をお聞きしていますから、せっかく遠路東京からいらしたのですから、お電話でご挨拶されたらいかがかしら」との言葉に励まされお電話することに。静かなお声で「もしこちらにお泊りになるのでしたら、我が家にいらっしゃいますか?」と言われ、短い会話の中、緊張しつつ一条さんお住まいになられる小鳥谷駅に向け鈍行列車へ。
初めての出会いからずうっと長くお付き合いくださった一条ふみさんからは、お会いするたびに大切な宝物のようなお話をどっさりお聞きしたことが私の内側に味わい深く重ねられて、どんな人にも芯から温かく受け止めてくださるお心に私も包まれながら、幾らかなりともお返しができないであろうかと自分に問いつつ、この本、『ふみさんの自分で治す草と野菜の常備薬』を作る作業に入ることになったのでした。
20年〜30年と、会えば時間が許す限り、お話をお聞きし、自分だけでなく、どんな人にでも「自分のいのちを守る」手だてを届けてあげたいとまとめました中から、折々、少しずつ引き出しては、ささやかにまとめたものをここでご紹介しようと思います。(よこやま とよこ)
内臓のさまざまな痛みに
スギナ
“冷えのダメージ”が本当に怖いのは
秋になってから
根は良質な水を求め地下2メートルにも
春、ツクシのあとから大きくなるあのスギナね。スギナはその根が良質な水を求めていくという植物で、ミネラルを豊富に含むそうなの。下痢が止まらないときとか、便秘、肝炎、それから腎臓病、膀胱炎、それから肋膜炎にもいいんですよ。痰や咳が止まらないときとか、関節炎とか神経痛も和らげてくれるのね。スギナはすべてにいいの。
スギナの効用は非常に広範囲で、どうやって使ったらいいかわかんなくなるくらいだけど、そんなにいっぱい覚えなくても、たとえば腰が痛いとか、なんだか腹がおかしい、もしかしたら子宮筋腫があるかもしれないとか、子宮から出血したときとかね、それから生理が不順、だとかいったときにも。生のスギナを蒸して、タオルとかさらし布とかに包んで、患部に当てるといいの、それがまずひとつね、簡単な方法の。これを何度も繰り返すとコシケとか冷え、すべてにいいんですよ。冷房でやられたときなんかにこれでやればいいの。それだけで相当違うはずですよ。http://www.amarans.net/229
戦後まもなくのことですけど、私が住んでいた一戸町で「市日」というのが立ったときに、大道で薬草を広げて売ってた人がいて、私も興味があったものだから、そばに行って見ていたんです。ユキノシタとかいろんな薬草を広げて、その人は、群がる人びとに「こんな症状にこれが効くんだよ」とかって、教えていたんですね。
「どうしてこういうことしてるんですか」って聞いたら、「僕は軍医だったんだよ」って。戦争で軍医として中国大陸に行って、ずいぶん兵隊たちを薬草で救ったんだって話をしてくれて。
みんなもう疲れ果てて、行軍中だってなんだって眠いから、耳さ水入らば入れで、泥水のところでも昏睡状態みたいなもんだから倒れたまんま寝てしまう。そうすると中耳炎になってしまって、ひどい場合は脳に上がって発狂する人もいたそうですから。それを治すのに、持って行ってたユキノシタを使ったんだという話でした
腎臓をやられる人も少なくなかったって。強行軍で無理を重ねているから、おしっこが出なくなったりしてひどく苦しんで。その時に、ツユ草を煎じて飲ませたそうです。野戦病院でそうしていたんでしょうね。それ以上悪くならないようには効くことが実際にも確かめられて、大変貴重なものだって話していました。
群がった人たちがみんな身を乗り出して真剣に聞いていましたね。その元軍医さんはドクダミからヨモギからツユ草から、なんでも持ってきていて、手当たりしだいって感じでしたよ。それがみんな、そんなにお金のいるものなんかじゃなくて、私たちの身辺にある雑草だということが私に深い印象を残したんですよ。毎市日にその人が来ていたから、私も通ってだんだんに勉強したわけです。関心もあったし。…
- 新しい記事
-
- ドクダミ 体内の毒を吸い出す (7月10日)
- トウモロコシの毛 煎じ茶で膀胱炎を治す (7月1日)
- スギナ 内臓のさまざまな痛みに 一条ふみさんとの出会い (7月1日)
- ツユ草 梅雨の後半からぐんぐん育ち、腎臓を守ってくれる (7月1日)
- 梨木香歩図書館で『ほどくよ どっこい ほころべ よいしょ』コメントを掲載していただきました! (4月10日)
- 『ふたりからひとり-ときをためる暮らしそれから』に、うれしい読者カードをいただきました。 (6月13日)
- カテゴリー