昼めし日記

 2010年8月27日

  ●昼めし献立 

  • 茄子と車麩の麻婆
  • オクラのカシューナッツ和え
  • 夏野菜サラダ(キュウリ、トマト、紫玉葱)
     
    おろし玉葱入りドレッシングで

  • 間引き大根と油揚げの味噌汁

 本日のオイシイ!

「むちっとした噛み心地と色つやがお肉みたい!」と歓声あげ

た30代と、「麩だよ~ 子どもの頃から食べさせられてたの」

と感激薄い親世代。でもおいしいのはいっしょ。

今年、遅まきながら麻婆料理にめざめさせてくれたのは、感覚を刺激する素晴らしい香りの中華花山椒。
つややかな茄子紺の色には、料理”魂”(ハハ、おおげさ‥)をむらむらと喚起させるものがありますしねえ。というわけで、食べて、食べてと誘惑する茄子を山椒の香りとともに麻婆茄子にしました。相棒は油との相性もいい車麩。
この茄子&車麩麻婆をひと口食べた30代の若いスタッフが「うわ~、お肉みたい!色といい、食感といい」とびっくりしていましたが、その親世代の私にとって、麩なんてあまりにありふれた食べ物で、”肉”と重ね合わせてみるなど考えも及ばないことなので、お肉中心の学校給食で育った世代の、食卓に「肉」料理があるのがあたりまえの感覚から思わず出た表現がじつにおもしろかったです。しっかり噛み心地もある車麩はたしかに色んな料理にもっと活躍してもいいかもね。

オクラはさっと湯がいて、すりおろしたカシューナッツを混ぜ合わせた醤油味のだし汁に浸け、少し味をしみ込ませます。事務所からの帰り道にある、居酒屋のメニューから拝借。懐ろに負担のかからない値段と、若き板前さんのセンスがなかなかよくて、たまに立ち寄ります。

サラダは定番の夏野菜を、盛りつけだけ変えて。満艦飾だわね。ちょっと恥ずかしく思う世代デス。辛みの少ない玉葱をすりおろして、酢、塩、オリーブ油のドレッシングをかけました。

本格的な秋に向けて、猛暑の畑でけなげに生きている大根の間引き菜が届きました。径1センチほどの細い根も葉もまだまだ幼く、ざくざくときざんで、さっと味噌汁へ。口の中だけでも秋の気配を味わって、ほぉ~っと一息。

★★昼飯コラム★★

  枝からもいで食べまくった無花果の甘美な記憶

先日、近所の八百屋ではじめてイチジクを買いました。よく熟れておいしそうに見えたのです。あまり大きすぎないところもいい感じでした。
わが家の裏庭にあった無花果の木に毎日のように登って、美味そうに熟れたものからもいでは食べていたあの甘美な記憶。とうとう熟れずに木に残った最後の実までとり尽くし、母が砂糖で煮て鍋いっぱいの甘露煮にしてくれるのを、まだかまだかと火のそばで待っていた楽しい想い出などもあり、なかなか無花果を買って食べる気にはならず、長い歳月が過ぎていたというわけです。
買った無花果のお味は…? 記憶が美化されやすいということを差し引いても、あの、木で熟した無花果のが凝縮した甘みとねっとりした果肉のおいしさにはとうてい叶わず、というところ。こんなものだろうと想像していたのでそれほどがっかりもしなかったのだけれど。
”日本イチジク”と”西洋イチジク”と呼んでいた2本の木が庭にはありました。西洋のほうはすっと背が高く、小学生では登れなくて、父や兄にとってもらっていたけれど、よくいえばさっぱりした味。甘みが薄く、なにかもの足りない。それにひきかえ日本イチジクは低い位置から太い枝が四方に伸びていて、登るのに格好の木でもありました。
隣家の柿の木にもしょっちゅう登っていて、こちらは、「柿の木は折れやすいから」と母がいつも心配そうにしていたことも思い出します骨折もせず無事に大人になったのは不思議なことに思えるほどお転婆(も死語か)。
いま、果物の木が葉を繁らせられるほどの庭をもつなんて、贅沢なことでしょうかね。柿、無花果、蜜柑、杏…お店で買わなくても、実がなるまでゆったり育てる楽しみ、プロの農家がつくる見栄のいいものほどでなくても、自家製の果物が食卓にのぼる暮らしっていいですよね。そういう私には、夢のまた夢の話ではありますが。

本日のお茶

ドクダミ(新潟・松之山産)とヨモギの薬草茶    

                                                                 料理人:よこやま