昼めし日記

2010年 2月16日

  昼めし献立 

  • 麦々堂のパン(ツビーベルブロート=玉葱練り込み。胡麻入りパン)
  • 豆腐のディップ(オリーブ油・塩)/すりおろし人参とサワークリーム/黒胡麻ハチミツ
  • 大根・人参のバターソテー
  • ゆで卵とブロッコリのサラダ(ターメリック香りづけ)
  • 千切り大根と、レタスの吸い物



☆昼飯コラム☆

 ”乾物”大好き派にうれしい1冊
タカコ・ナカムラさんの『”Kanbutsuカフェ”の魔法のレシピ』
                         ~乾物のススメ~

 「アラメ」って何? 聞いたことも見たこともないっていう人もいるのでは? 日本海近くの町で育ったので、食卓は魚や海草などはなじみ深い。アラメは、ちょっと見、ヒジキに似ていないこともないけれど、だいぶ違うと言えば違う。我が家では、アラメといえば、乾物の代表格。ヒジキと同じような使い方だったけど、圧倒的にこっちの出番が多かlった。しかし東京で暮らすようになって、買い物に歩いても、まったく見かけることがなく、ヒジキのことじゃないのかと言われたり。手に入らないとなると無性に食べたくなる。しかたなく、帰郷したおり、市場で買い求めていた。アラメのおいしさはヒジキ以上と今でも思っている。
 
それが、数年前、この本の著者、タカコ・ナカムラさんの主宰するWhole Food schoolで、「うわ~」、懐かしいアラメに再会。軽やかな小ぶりの器におしゃれに収まっているけれど、紛れもないアラメだったのです。
 
私にとって乾物は、”大好き”! の前に、乾物”あたりまえ”世代。あまりに身近で、たいしてありがたさもなく育ったというところ。今やヘルシーな食品のラインナップに欠かせない「麩」だって、それこそ年がら年中、食卓に上っていたんだもの。私の育った新潟市周辺で、どこにでも売られていたのは、「車麩」という、真ん中に穴のあいた、直径7~8センチもある大きなあれ。もっとも、さんざん食べさせられた昭和20年代から30年代半ばくらいまでは、食糧不足の時代。おそらく小麦の質もよくなかったのだろう(ちかごろは原料表示に「大豆たんぱく」となっているのもある)、おいしいと思って食べた記憶がないけれど。打ち豆(大豆を水に15分ほど浸したのち、木槌でぺしゃっとつぶしたもの。それを乾燥したのが、たいていの家の台所にあった)、ヒジキやアラメ、ワカメなどの海草、スルメ、干し椎茸、キクラゲ、大根の干し葉…これらは我が家では常備品で、なくなれば必ず補充されていたと思う。
 うれしいことに、この本では我々団塊世代郷愁の乾物はもとより、和食という枠から離れて自由な発想の乾物食材がふんだんに紹介されている。実業の日本社から近々発売です。
 私よりひと回りほど若いタカコさんだけど、太陽にあててうま味も栄養価もアップした干物を食卓に取り戻したいんです、と前から漏らしていたと思ったら、2007年、東京・代々木上原で開店した
Kanbutsu Cafeのプロデュースで実現。同店ではいま、30代の若い女性スタッフたちが乾物を使ったテイクアウトの料理や、スイーツに腕を振るっている。
 お陽さまのおかげですかね、ほどほどにアクも抜けた乾物って、うまみが凝縮されて、ほんと、おいしいんだから。おてんとうさまに感謝したくなるよね。

車麩(手前)と、まんじゅう麩(新潟岩船地方でつくられているので、「岩船麩」とも)。

 大根、人参、飽きもせで~~ 無限の可能性秘める野菜に日々‥
ペースト状にした玉葱が練り込まれた全粒粉のパン。胡麻の固まりなのかパンなのか?というほど粗摺りの黒胡麻がガッツリ詰まったドイツパン。どちらも大好きな旭川・ベッカライ麦々堂の人気アイテム。軽くトーストすると麦と天然酵母が渾然となって醸し出すおいしさにに、あとからあとから、つい手が出てしまう。実際は3~4切れでじゅうぶんなほど中身が充実しているから、おかずまでほいほい食べてると、食べ過ぎになってしまうんだが…。

だいたいはストックしているお米中心に考えることが多い昼飯メニューだけれど、パンに合うおかずを考えるのももちろん楽しい。まず、とってもらくちんなディップを2種。水切りした豆腐(厚揚げの外側をはがして中だけ使うことも多いデス)を手元にあるザルでムニューっと漉して、オリーブ油と塩を混ぜ合わせればオーケー。すりおろしニンニクを混ぜたのもおすすめ。
それと、人参をざざっと(2~3人分で中1本くらいかな)すりおろして、サワークリーム(事務所の冷蔵庫ではだいたい常備してます)と混ぜ合わせ、レモン汁少々と塩、カイエンヌペッパーで辛みと香りづけ。タラマヨも旨いが、人参もイケますよ。
あと、当事務所の定番、蜂蜜に胡麻を煎って半摺りにしたのを混ぜ合わせた黒胡麻蜂蜜ペーストも用意。 

これだけあれば、あとはスープだけでもいいようなものだけれど、何しろ野菜食べなきゃ、食事した気がしないクチなので、年中食べていても飽きるなんてこたぁないです。野菜って、いくらでもレシピを考えられる無限の可能性を秘めた素材だから。大根、人参のような大昔から食べられてきたものでも、きょうはどんなふうに使おうかなと、楽しみは尽きない。切り方を変えてみるだけでも、舌触りから調味料のしみ込み方まで違ってくる。
包丁じゃなく、ピーラーで皮をむく要領で縦に長めに切ったのを、バターで炒めて、バターの香りをからませたら、こんな感じに。塩、胡椒でそれぞれの甘みが引き立つよう薄味に仕上げ、トッピングにはディルのパウダーを散らして。

ゆで卵(昨日のものだったような)と、さっと蒸したブロッコリのサラダには、炒めて香りを出したターメリック入りドレッシングで。軽く塩をふって。

本日のお茶

薬草茶(アマランサス。種も茎も葉も。根津の借家時代に、小さな庭で育てたアマランサスは2階にまで届くほど大きく成長。それを干して保存していたもの)

本日のおやつ

新潟市にある和菓子の老舗「里仙」の逸品「栗かん」。
本練り羊羹ではなく、生菓子の練りきりに近い作り方で、
白あんのなかに栗がびっしり、というのがうれしい。
秋から3月いっぱいまでの季節限定で、しかも、すぐに
売れてしまうので、悔しい思いをしたこともしばしば。
上品な甘みのなかに栗の野趣を感じさせてくれます。

                                   料理人:よこやま