| TOP > 日々のたより>2005年10月12日 |
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続 イカウシの森に暮らして (3)
「女王蜂に会いたい」と言っている
働き蜂のささやき
女王蜂のいない群は、いずれ全滅する、と書いてある本をたまたま見てしまい、シロウト蜂部員はあせった。師匠に対策を聞きに行くと、開口一番、「ほんとによく探してみた?箱の底に落下してなかった?」という。そう言われると自信がないけれど、女王蜂は白っぽくて大きくて周囲の蜂がみんな女王を囲んで頭を向けているので私でもすぐ、わかるはずなのだ。それにしても、働き蜂たちは女王様にお尻は向けないんだなあ。不思議。
今回は4人がかりで探したが、やっぱりいなかった。「おかしいなあ、じゃ、みんなお尻を震わせて,女王様がいない、いない、って言ってませんでしたか?」と師匠がまじめな顔をして言う。働き蜂が、お尻を震わせて、女王様がいない、って「言う」わけ? 何それ?
あー、養蜂家への道は遠くきびしい。師匠には聞こえるんだ、働き蜂が、尻震わせて言ってることが。
きっと本当に言っているんだろうなあ。私たちには未だそれらを『聞く』事ができないだけなのだ。師匠はそういえば、いつも、もの静かで、ていねいで、勝手に弟子入りの私にまで、いつも敬語だ。こうでなくては蜂の言葉を聞き分けるのは難しい..のだろう。ミツバチのささやきを聞き分ける事ができるなんて、すごい事だと思う。尊敬。
そして師匠が教えてくれたアドバイスは「群の合同」というもの。女王蜂のいない弱った群を、強い女王蜂のいる元気な群と合併させる事らしい。ただし蜂たちにはそれぞれの群で強固な連帯があるので、他の群のハチが巣の中に侵入すると同じミツバチでも容赦なくやっつけられてしまうそうだ。じゃ、どうやって合同させるのか。
「あ、それはね、サロンパス。」え? 何それ? 師匠、なんなんですか、ハチにサロンパスとは?
箱の中にサロンパス入れとくと、あの湿布薬の強烈なニオイで、他のハチと自分たちのニオイが区別できなくなり、そのうち何となく、一つの群として行動するようになるという。こんな方法を使ってるのはウチの師匠だけかもね。その他の方法も一応聞いてみると「じゃ、古新聞。」へ? ハチに古新聞?
強い群と弱い群の箱の間に古新聞を一枚はさんでおく。すると強い群にいる女王蜂を“慕って”弱い群のハチたちが[女王さんに会いたい、会いたい、と”言って”」数日後、古新聞を食い破って強い群にまぎれてゆくのだそうだ。数日の間に、ニオイも混ざって、一つの群として、めでたく合同する。という。そうか、女王さんに会いたい、会いたい、って言うのね、尻震わせて。
すっかり感動した私は帰ってきてもう一度、女王蜂不在の箱をのぞいてみた。そしたら・・・
言ってるよ!言ってる言ってる。確かに尻を小刻みに震わせて、右往左往しているではないか!『女王様いなくて不安』という空気が確かに感じられた。言ってるじゃん、なんでわからなかったんだろう。
結局、「古新聞」方式を試してみる事にした。いつ、古新聞の壁が食い破られて、東西統一、じゃなくて上下群統一がなされるか、ドキドキすること数日、ほんとに新聞紙の一部が食い破られて、ハチたちが自由に行き来していた。ヤッター!平和的統一!
しかし、サロンパスといい、古新聞といい、戦中派の師匠は,身近なものを利用して何でもやってしまう。そこがスゴイ。
こうやって、偉大な師匠に助けてもらいつつ、二年目のハチ部は順調なスタートを切った。が、ハチの世界はそんなに甘くはないんだな。一難去ってまた一難。問題は次々と起こってくる。始めたばかりの昨年は、単に、なーんにもわかってなかっただけなのだ。わかってくると恐ろしい。この続きはまた今度。(つづく)
(2005.10.12/花房葉子『カムイブロートの食卓』著者
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