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TOP > 日々のたより>2004年12月20日

日々のたより

イカウシの森に暮らして(3)

「わたしのカワイイ蜂さんたち」がやってきた


 私のカワイイ蜂さんなんて言ったって、何も知らないし、何もできないのである。春、活動を始めたばかりの蜜蜂を、まあ一度見にいらっしゃいと、蜂蜜のオジサンが言ってくれるので、手ぶらで出かける。イカウシよりは町だが、イカウシよりもっと北の町、剣淵町という所。オジサンの軽トラックのあとをついてゆくと、シラカバの林の中にある牧草地である。なーんも珍しくない、北海道だったらどこでも見られる風景。あれが蜂さんのおうち、という古ぼけた木箱が数個地面に置いてあるだけ。地味だなあ、何だか。だいたい牧草地なんだから花もないのに、蜜蜂はどこで蜜を集めるのだろう。と思っているうちにオジサンは何だかモクモクと煙の出る、ふいごの付いた空き缶みたなモノ(燻煙箱という蜂屋には欠かせない道具)をバフバフいわせながら私には頭からかぶる網みたいなものを貸してくれる。箱のふたをそうっと開けると、かすかな羽音が聞こえる。軍手をはめて、そうっと手を差し入れると、ほのかに暖かい。そして蜂蜜のにおいがする! 
 初めて間近で目にする蜜蜂は小さくて、体にベージュ色の毛がびろうどのように生えていて、オナカがシマシマで、顔もかわいい。スズメバチとは大違いである。
 軍手をはめて私の手の上をよちよち歩いたりするが、刺されるような心配はぜんぜんなさそう。だいたいオジサンなんか素手だもん。「刺されないんですか」と聞いたら、「そうっと、静かに扱えば、まず大丈夫。騒ぐようだったらこの燻煙器で煙をかけてやればおとなしくなりますよ」という。
 私にもちょっとだけ、巣を持ち上げて観察する(内検という。カッコイイ!)のをさせてくれる。観察するったって、何が何だかわからない、うわーこんなに大勢いるんですねー、女王様ってどこにいるんですかー、うわーこの大柄で黒目がちなのが男子? 男子は刺さないの? フーンあっ、オジサン男子のこと指でつぶしちゃった。えっ、男子は大勢いなくてもいいんだって? 無駄メシ食いだってアハハハ。なるほどねえ。春、越冬したミツバチたちは貯蔵した蜜を食い尽くし、ふらふらしながらまず、ネコヤナギの蜜をおなかいっぱい食って、元気をつけ、女王蜂にたっぷり密を運んで卵を産んでもらい、自分たちの群を増やすのだという。あの銀色のネコヤナギから蜜が採れるなんて知らなかった。と、もうすっかり気分は養蜂家。
 (つづく)
            (2004.12.20/花房葉子『カムイブロートの食卓』著者)

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