| TOP > 日々のたより>2004年12月14日 |
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イカウシに初雪が降りた朝
ある朝、カーテンをあけると世界中が真っ白で、ひんやりとした水のにおいがしている。一体ここはどこなんだ。他の星に来てしまったみたい…というのが、私が住んでいる北海道北部、上川郡イカウシの初雪の風景である。
昨日までとは全く違う世界が目の前に広がっている。一晩で60センチもの雪が積もっちゃうんだから。きのうまでは枯野とはいえ、緑の牧草だって風になびいていたし、晩秋の最後の華やぎに必死に咲いているタンポポやスミレも見えていたのに。すべてが白一色に覆われると、はるか彼方までずうっと見渡せる。茫洋として広い。すっかり葉を落として骨格だけになった木々の向こうに見える空もやけに広い。そしてスカーンと真っ青に明るいのだ。
という薄ら寒く何もない、もの悲しいようなイカウシの冬が私は大好きである。いや強がりじゃなく。寒いの大好き!
しかしあんまり雪だ雪だうれしい、と言うと、大多数の寒いのは嫌いな人たちにバカ扱いされるので、密かに犬たちとだけ喜んでいる。うちの黒ラブ、エマとアンヌも寒いの大好き。雪が降ると四本足一緒にジャンプして喜ぶ。降ってくる雪をカプッ、カプッと食べたりもする。「そんな山の中で、ケモノやなんか(ってエマやアンヌのこと?)といて、寂しくないですか」とよく質問されるのだが、だいたい田舎に住んでいて一番オソロシイものは人間である。見知らぬ人が歩いていたりするとギョッとする。キノコ取りだったり、笑っちゃうくらい重装備で猟銃持ったハンターだったり、ロクな奴はいない。こういうコワイ人間も雪の季節には現れないから安心だ。キツネだのシカだの、(クマはちょっと会いたくはないけれど)本物のケモノなどはいてくれて安心することはあっても困ることはない。彼らは思慮深く、ナイーブだ。
だいたい、この季節は忙しいんだもの。寂しいなどと思うヒマが私にはない。例年より初雪が遅かったせいですっかり油断していた。春の楽しみのために球根をあちこちに埋めなきゃ、そして車のタイヤを交換しなきゃ。まだある、夏の間、草ボーボーの中でけなげに咲いてくれたオールドローズに筵をかけて雪囲いしてやらなきゃ。そして春から飼い始めたミツバチたちの越冬の用意をしなきゃいけない。! (つづく)
(2004.12.14/花房葉子『カムイブロートの食卓』著者)
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