| TOP > 日々のたより>2004年10月25日 |
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花火師がんばれ
25歳の息子は花火師だ。そう言うと大半が目を丸くし、「すばらしい」とか「面白いでしょう」とか返ってくる。中には「えらいですねえ」と言う人もいる。伝統を継ぐことをさしているのか、危険、きつい、汚い、3K職場に身を投じたことをほめているのか、よく分からない。
不況にかかわらず、納涼に始まり、スキー場開き、ナイター、学園祭、宗教団体の祭りなど、季節を問わず、花火を打ち上げられている。それに加え、NHKテレビ「こころ」や映画「天国の本屋|恋火」に花火師が登場したせいか、花火師希望の若者が増えているという。ところが全国に約200社ある花火関連会社(店)は、大手でもアルバイトを含め従業員100人程度。零細なところが圧倒的で、花火師になるのは狭き門だ。
息子は大学3年の時、全国の花火会社に手紙を出し、雇ってくれるよう頼んだ。「工場を見学に来なさい」と招いてくれた会社、「この業界は将来性がないから思い留まるように」と丁寧な手紙を送って来た有名職人、「実の息子だって継ぎたがらないのに、感心だねえ。でも夫婦二人きり店で雇えない」と断りの電話をくれた人など…。結局、在学中から大手の会社でアルバイトを始め、著名な大会の打ち上げの手伝いや、水田の真ん中にある製造工場の住み込みなどを経て、卒業後、打ち上げ専門会社社員に。テーマパークで打ち上げ花火や火薬を使うショーを担当するほか、年に数回、花火大会でも打ち上げている。なぜ花火師にと聞くと、「一瞬で、人を感動させられるところに惹かれた」との答え。
ある時、川べりで開かれた大会で、暗い川面に目を凝らすと、台船の上でヘルメットに防火服姿で走り回る息子たちの姿が目に入った。数十万人の大観衆の目は頭上の花火に釘付け。川の真ん中で、緊張感をみなぎらせて働く職人の姿など目に入らない。見事な大輪の花火が開くと、大歓声が上がる。どんな轟音の中にいても、職人たちの耳にもその声は届くそうだ。
様々な職業の人の仕事への思いを取材した「幸福なしごと」は、週刊新聞に5年間に渡って連載したものだ。初回に取り上げたのが花火師。派手な花火の黒子の気持ちを聞きたかったのだ。久しぶりに本を開くとそこには「花火大好きです。(一度に)数百万人楽しませることができるんです。どんなコンサートだってかないません」とあった。
花火師がんばれ。
(2004.10.25/山田優子『幸福なしごと』著者)
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