| TOP > 日々のたより>2006年7月11日 |
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風にそよぐ麦
岩手県北に小麦栽培農家をたずねて
梅雨まっただなかの6月末、石川啄木の故郷、渋民と隣接する旧玉山村(現在は盛岡市)に、地元岩手産の小麦「南部」「コユキ」品種を栽培する農家を訪ねました。
なだらかな丘一面に広がる黄色く色づいた「南部小麦」。道を隔てた向かい側のゆるやかな斜面には青みがかった色の「コユキ」が育っています。あと10日ほどで刈り取りが始まるという麦畑を、さわさわと風が渡り、麦の穂がいっせいに揺れていました。
1960年代後半ころから、パン食の拡大にともない、もともと麦、稗、粟、キビなどの雑穀を栽培常食してきた岩手県北地域では、パンにも適した小麦品種をと研究が進められ、たくさんの品種が開発されましたが、両品種とも奨励品種となったものです。
実はこの日、岩手へご一緒にと声をかけてくれたのは、お父さんが「コユキ」品種を開発した研究者だったという大和田聡子さん。高校まで、盛岡市内にある東北農業試験場の官舎に住み、牛が草を食んだりしていた広大な試験場のなかを遊び場にして育ったという大和田さんは、お父さんが次々試作するパンを家族でよく食べさせられていたそうです。
大人になって、旨いもの好きからワインへの関心が深まるとともに、ワインとともに食するパンを手づくりするようになって、気がつけば、小麦、特にパン用は輸入がほとんど。父上の半生の作品とも言える「コユキ」品種の生産は風前のともしびに。なんとかこのコユキをパン用に復活させたいと、東京・洗足の自宅を改造、「コユキ」だけでパンを焼くお店、ワルン・ロティを開業してしまったというわけです。
現在、岩手県では『コユキ」は特産のうどん、ひっつみに適した品種として奨励しているものの、米国の圧力に屈しつづける国の農業政策のもと、国産小麦の生産をめぐる状況は厳しいものがあります。
そうしたなか、「コユキ」だけで2・5町歩と、まとまった生産を続ける数少ない農家である福田さんは大和田さんにとっても頼もしい存在です。国産小麦はパンづくりに使うには扱いが難しいという意見もあるけれど、大和田さんは「クセと個性は表裏の関係。その特徴をつかんだら、とても風味のいいパンになりますよ。ひいき目ではなく、食味が優れているからこそ、コユキをもっともっと普及させたい」と目を輝かせながら語ります。
1年で最も多忙なこの時期、福田さんとは畦道での立ち話となりましたが、どちらの品種も今年の生育は上々とのこと。「もっとも、ここまで来たら、あとは人間がやれることはない。このあと収穫までの10日ほどをダメージを受けるほどの雨にやられないようにと祈ることしかできないから」と福田さん。帽子の下から覗く日焼けした顔は淡々としていました。
岩手県地方は7月に入ってから、日照時間の不足、低温などが続き、作物への影響も心配されているとのこと。ムギの稔り具合、気がかりです。
(2006.7.11/横山豊子 自然食通信社編集長)
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