| TOP > 日々のたより>2006年5月26日 |
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きもと。
一条ふみさんから届いた 貴重な 野の恵み
いつも野菜をとっている埼玉の農家から新玉葱が事務所に届きはじめたのは5月の初め頃だったでしょうか。しゅっと包丁を入れると、ついこないだまでの冬越し玉ネギから発散される刺激臭ではなく、瑞々しい香気が満ち満ちて、うっとりします。しばらくはこの感触を楽しみたく、水さらしもせずただスライスしただけの新玉葱のサラダが毎日のように昼飯に登場しています。
それより少し前、岩手にお住まいの著者、一条ふみさんから、これまで見たことのないような分葱ふうのものが届きました。大きさはニラくらいだけれど、ニラの葉は平たいのにこれは中が空いている。分葱とも違う感じがするのは、全体が濃い緑色で、先っぽのほうにむかってとちゅう少しふくらみあり、分葱よりたくましい姿。しっかりした縦の筋が入っているところは、行者ニンニクのほうに似ているかな。でも匂いはニンニクより葱に近い。
しげしげと眺めつつあれこれ思い巡らしてはみたものの、どうも初見参の野菜(?)のよう。お礼も申し上げたく、お電話をしたら、地元では「きもと」と呼んでいて、「沢からずっと下がっていって河原に下りる手前当たりの日当たりのいいところに自生している」のだそう。
一条さんが育った岩手県北あたりでは「昔は葱が貴重だったから、日常的には食べていなかったの。結核とか肋膜の病気に葱がいいっていうので、何とか精をつけさせようと、この「木もと」を見つけてきて食べさせたりしたんですよ。だけど今は山も荒れ果てて、「きもと」も、藪に隠れてしまって分からなくなっているのでは」と。貴重な野の恵みです。
食べ方は分葱や葱と同じようにさっとゆがいて味噌をつけたり、酢味噌あえなどにすることが多いというので、さっそくやってみました。栽培されたものより、たしかにしっかりした舌触りと噛み応え。でも筋っぽいというわけではなく、さわやかで野性的な味わいは忘れがたいものになりそうです。
その後、一条さんをご自宅にお訪ねしたときにも、台所には採ってきたばかりという「きもと」がありました。
著書の『自分で治す草と野菜の常備薬』完成後数年たつのに、お訪ねするたび、一条さんの記憶の引き出しからまだお聞きしていなかった薬草の話が汲んでも尽きない泉のように次々と出てくるのに驚かされてばかりいます。
(2006.5.26/横山豊子 自然食通信社編集長)
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