| TOP > 日々のたより>2006年2月10日 |
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あらためてテレビの威力、思い知らされて
もう15年近くも前になるだろうか。新しいスタッフを迎えて少し経った頃、彼女の叔父さんという方が事務所に見えた。たまたま彼女は外出していたため、短い言葉を交わしただけで、その方は洋菓子をお土産においてゆかれた。うきうきしながらも何気ない気持でいただいたその焼き菓子はこれまでに味わったことのないおいしさで、軽い衝撃を覚えたほどだった。今はフリーの洋菓子職人でまだ店を持たず、いくつかの洋菓子店で技術指導などしているといったことをあとで彼女に聞いた。
その後、神戸で初めての店を持ち、味にうるさい神戸っ子たちをうならせていたが、その店を閉じ、2年前、東京京橋に洋菓子店 HIDEMI SUGINOを開店した。
隅々まで神経の行き届いたシックなデザインの店の奥は、その日出来たての菓子を味わってもらえるようにと、カフェがしつらえられている。初めて伺った夏の日に買ったのはミントをしのばせた薄水色が涼やかなケーキとあと数種類。事務所でみんなでいただいた。それぞれの素材が洗練の極みで引き出され渾然とした作品を完成させているかのような味わいに、一同うっとり。お値段もなかなかハイレベルではあるが、スペシャルなことがある時などには、ぜひと思う。
そのパティシエ、杉野英美さんがNHK総合テレビでこの1月から始まった新番組「プロフェッショナルに聞く 仕事の流儀」に24日登場し た。名前が知られるにつれて支店を作ったり何店もの百貨店に進出し、またたくまに事業を拡大していく人が多い中で、店の厨房で日々、一流の仕事のレベルを守りつづける数少ない職人の一人として。
杉野氏の細心の注意をはらいながらそれぞれの味を確信をもって決めていくことで、使われる素材のなかのものを引き出していくのだというその仕事の仕方をみて、あのときのおいしさの秘密を垣間見た気がした。
昨日、仕事で近くに行っていたので、帰りに店にいったところ、午後3時頃、すでに完売の貼り紙が。ガラス越しに見える店内のショーケースにはきれいに何もない。テレビの影響恐るべし。こんどあの究極の味を賞味できるのはいつのことであろうか。
(2006.2.10/横山豊子 自然食通信社編集長)
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